Early Works 2008-2011 (Bandcamp Original), by shotahirama
shotahirama.bandcamp.comshotahirama.bandcamp.com
彼のpost punk以前のサウンド志向がグラデーションを描くように開陳されていく。
ノイズ、コラージュ、テクノ、アンビエント、グリッチと90年代からゼロ年代という時代性を捉えながらも雑食性が非常に旺盛な印象を受けるが、これだけ様々な素材が混在していても音の一つ一つが非常にクリアであるところにこの作家の個性、または狂気性を窺い知れる。
post punk以降の彼の作品には更に先進性が加わっており、post punkにおけるその先進性が今こうしてカオス化する社会の激動と合致しようとしている矢先に、彼はまた新たな地平を目指している。
2019年に発表した新作Rough Houseはオールドスクールなヒップホップを今あえて根底から掘り起こしつつ形骸化したクリック(ヒップ)ホップとでもいうべきもので、仮想空間の高速移動を思わせるグリッチは子供が手遊びしたような安寧なスクラッチノイズに変換され、一種異様なムード漂うビートミュージックになっていた。そしてまもなくリリースされるStay On The Lightもまたその延長にある作品であることが予想される。
今ようやく彼の新作群が理解不能であるということを自覚できている。
先行公開されたミュージックビデオIM ON FIREも先鋭的なビデオアートを掛け合わせてあるが、現代的(風)な映像がことごとくその時代性に飲み込まれていくことをあざ笑うようなブレイクビーツはこのポストパンデミックの世界を清陰から傍観している印象さえ受ける。
この理解しがたい新しい音楽は、それでいてそこに介在する謎という謎が聴覚を誘惑して止まない。
この「謎」そのものが途轍もなく美しく愛おしい。
これこそが未知なる音楽が未知たる瞬間にある状態なのだろう。shotahirama.bandcamp.com
niwanokns.hatenablog.com
niwanokns.hatenablog.com
Re-view the shotahirama !
ANOTA #1, by Takayuki Niwano
niwano.bandcamp.com
テン年代の一つの兆候として俯瞰してきたムーブメントが2020年を迎えて尚新たな展開を迎えようとする中で、私の志向も一種の原点回帰を含みつつ、このムーブメントに傾倒する形で作品コンセプトの根幹を担うに至っている。
Rakka / Vladislav Delay
だがそれは前作Visaにおける人為的なものとは違う。
これは公共的な怒りだ。
生に対する方針を問い質し続ける大地と対峙した瞬間の衝動が彼の指先から放出されている。
Visaが現行型テクノならば、Rakkaは先行型テクノとでも言えようか。
しつこいようだが、テクノは既に死んでいる。
niwanokns.hatenablog.com
@@@@@ - Single / Arca
Arcaは音楽をあらゆる観点からバリアフリーな方向へ進化させていく。
幾重に装着された鎧を剥がしていくように更新を繰り返し身一つとなり、ついに近代音楽そのものをリヴァイヴさせたこの作品は1時間を超える長大なシングルEPであるが、数多のシングル同様、直後に発表されるアルバムのリードトラックの如く広告媒体化しジャケットそのままの動く風景とともに動画サイトへ投げ打たれる。これぞ大衆音楽の成れの果て、そしてこの瞬間こそが真の現代音楽の夜明けである。
2017 - 2019 / Against All Logic
Nicolas Jaarによる変名ユニットの新作もまた新たなるリヴァイヴァルを予感させる作品集だ。これまでの同名義作品のようなソウルミュージックからの引用を主体としたハウストラックだが陶酔感を廃するように形骸化され、研ぎ澄まされていくビートとそれに絡みつくノイズがもはやネットワークの発達によって無意味化されていくダンスフロアとベッドルームの境界線を行き来する。 ウィルスの蔓延によってスラム化するダンスフロアとストリームの進化によってリアリティを増す仮想世界を投射するベッドルームが逆転し、ハウスミュージックが本来ホームパーティ規模の空間で生まれていることを再認識する時代が、すぐそこまで来ているのかもしれない。
◁◁◁ ◁◁◁ ◁◁◁ ◁◁◁ ◁◁◁ ◁◁◁